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ノードの圧迫による退避
ノード圧迫による退避は、kubeletがノード上のリソースを回収するためにPodを積極的に失敗させるプロセスです。
備考:
Kubernetes v1.31 [beta] (enabled by default: true)
分割イメージファイルシステム 機能は、containerfsファイルシステムのサポートを有効にし、いくつかの新しい退避シグナル、閾値、メトリクスを追加します。
containerfsを使用するには、Kubernetesリリース v1.34でKubeletSeparateDiskGCフィーチャーゲートを有効にする必要があります。
現在、containerfsファイルシステムのサポートを提供しているのはCRI-O(v1.29以降)のみです。
kubeletは、クラスターのノード上のメモリ、ディスク容量、ファイルシステムのinodeといったのリソースを監視します。 これらのリソースの1つ以上が特定の消費レベルに達すると、kubeletはリソースの枯渇を防ぐため、ノード上の1つ以上のPodを事前に停止してリソースを回収します。
ノードのリソース枯渇による退避中に、kubeletは選択されたPodのフェーズをFailedに設定し、Podを終了します。
ノードのリソース枯渇による退避は、APIを起点とした退避とは異なります。
kubeletは、設定したPodDisruptionBudgetやPodのterminationGracePeriodSecondsを考慮しません。
ソフト退避の閾値を使用する場合は、kubeletは設定されたeviction-max-pod-grace-periodを順守します。
ハード退避の閾値を使用する場合は、kubeletは終了に0秒の猶予期間(即時シャットダウン)を使用します。
自己修復の仕組み
kubeletは、エンドユーザーのPodを終了する前にノードレベルのリソースを回収しようとします。 例えば、ディスクリソースが枯渇している場合は未使用のコンテナイメージを削除します。
失敗したPodを置き換えるワークロード管理オブジェクト(StatefulSetやDeployment)によってPodが管理されている場合、コントロールプレーン(kube-controller-manager)は退避されたPodの代わりに新しいPodを作成します。
static Podの自己修復
リソースが圧迫しているノード上でstatic podが実行されている場合、kubeletはそのstatic Podを退避することがあります。 static Podは常にそのノード上でPodを実行しようとするため、kubeletは代替のPodの作成を試みます。
kubeletは、代替のPodを作成する際にstatic Podの priority を考慮します。 static Podのマニフェストで低い優先度が指定され、クラスターのコントロールプレーン内で定義されたより高い優先度のPodがあります。 ノードのリソースが圧迫されている場合、kubeletはそのstatic Podのためにスペースを確保できない可能性があります。 kubeletは、ノードのリソースが圧迫されている場合でもすべてのstatic Podの実行を試行し続けます。
退避シグナルと閾値
kubeletは、退避を決定するために次のようにさまざまなパラメータを使用します:
- 退避シグナル
- 退避閾値
- 監視間隔
退避シグナル
退避シグナルは、ある時点での特定リソースの状態を表します。 kubeletは退避シグナルを使用して、シグナルと退避閾値(ノード上で利用可能なリソースの最小量)を比較して退避を決定します。
kubeletは次の退避シグナルを使用します:
| 退避シグナル | 説明 | Linux専用 |
|---|---|---|
memory.available |
memory.available := node.status.capacity[memory] - node.stats.memory.workingSet |
|
nodefs.available |
nodefs.available := node.stats.fs.available |
|
nodefs.inodesFree |
nodefs.inodesFree := node.stats.fs.inodesFree |
• |
imagefs.available |
imagefs.available := node.stats.runtime.imagefs.available |
|
imagefs.inodesFree |
imagefs.inodesFree := node.stats.runtime.imagefs.inodesFree |
• |
containerfs.available |
containerfs.available := node.stats.runtime.containerfs.available |
|
containerfs.inodesFree |
containerfs.inodesFree := node.stats.runtime.containerfs.inodesFree |
• |
pid.available |
pid.available := node.stats.rlimit.maxpid - node.stats.rlimit.curproc |
• |
この表では、説明列がシグナルの値の取得方法を示しています。 それぞれのシグナルは、パーセンテージまたはリテラル値をサポートします。 kubeletは、シグナルに関連付けられた総容量に対する割合を計算します。
メモリシグナル
Linuxノード上では、free -mのようなツールの代わりにcgroupfsからmemory.availableの値が取得されます。
これは重要なことであり、free -mはコンテナ内で動作せず、ユーザーがNode Allocatable機能を使用する場合、リソース不足の判断はルートノードと同様にcgroup階層のエンドユーザーPodの一部に対してローカルに行われるためです。
このスクリプトまたはcgroupv2スクリプトは、kubeletがmemory.availableを計算するために実行する一連の手順を再現します。
kubeletは、圧迫下でもメモリが再利用可能であると想定しているため、inactive_file(非アクティブなLRUリスト上のファイルベースのメモリのバイト数)を計算から除外します。
Windowsノードでは、memory.availableの値は、ノードのグローバルメモリコミットレベル(GetPerformanceInfo関数システムコールによって参照)から、ノードのCommitLimitからノードのグローバルCommitTotalを減算することによって導出されます。
ノードのページファイルサイズが変更されると、CommitLimitも変更されることに注意してください。
ファイルシステムシグナル
kubeletは、退避シグナル(<identifier>.inodesFreeや<identifier>.available)で使用できる3つの特定のファイルシステム識別子を認識します:
-
nodefs: ノードのファイルシステムであり、ローカルディスクボリューム、メモリにバックアップされていないemptyDirボリューム、ログストレージ、エフェメラルストレージなどに使用されます。 例えば、nodefsには/var/lib/kubeletが含まれます。 -
imagefs: コンテナランタイムがコンテナイメージ(読み取り専用レイヤー)とコンテナの書き込みレイヤーを格納するために使用できるオプションのファイルシステムです。 -
containerfs: コンテナランタイムが書き込み可能なレイヤーを格納するために使用できるオプションのファイルシステムです。 メインファイルシステム(nodefsを参照)と同様に、ローカルディスクボリューム、メモリにバックアップされていないemptyDirボリューム、ログストレージ、エフェメラルストレージに使用されますが、コンテナイメージは含まれません。containerfsを使用すると、imagefsファイルシステムをコンテナイメージ(読み取り専用レイヤー)のみを格納するように分割できます。
したがって、kubeletは通常コンテナファイルシステムについて次の3つのオプションを許可します:
-
すべてが単一の
nodefsにある場合、"rootfs"または単に"root"として参照され、専用のイメージファイルシステムはありません。 -
コンテナストレージ(
nodefsを参照)は専用のディスクにあり、imagefs(書き込み可能レイヤーと読み取り専用レイヤー)はルートファイルシステムから分離されています。 これはよく「分割ディスク」(または「分離ディスク」)ファイルシステムと呼ばれます。 -
コンテナファイルシステム
containerfs(書き込み可能レイヤーを含むnodefsと同じ)がルートにあり、コンテナイメージ(読み取り専用レイヤー)は分離されたimagefsに格納されています。 これはよく「分割イメージ」ファイルシステムと呼ばれます。
kubeletは、これらのファイルシステムを現在の構成に基づいてコンテナランタイムから直接自動検出しようとし、他のローカルノードファイルシステムを無視します。
kubeletは、他のコンテナファイルシステムやストレージ構成をサポートせず、現在イメージとコンテナに対して複数のファイルシステムをサポートしていません。
非推奨のkubeletガベージコレクション機能
一部のkubeletガベージコレクション機能は、退避に置き換えられるため非推奨となりました:
| 既存フラグ | 理由 |
|---|---|
--maximum-dead-containers |
古いログがコンテナのコンテキスト外に保存されると非推奨になります |
--maximum-dead-containers-per-container |
古いログがコンテナのコンテキスト外に保存されると非推奨になります |
--minimum-container-ttl-duration |
古いログがコンテナのコンテキスト外に保存されると非推奨になります |
退避閾値
kubeletは、退避の判断を行うときに使用するカスタムの退避閾値を指定できます。 ソフト退避の閾値とハード退避の閾値の退避閾値を構成できます。
退避閾値は[eviction-signal][operator][quantity]の形式を取ります:
eviction-signalは、使用する退避シグナルです。operatorは、<(より小さい)などの関係演算子です。quantityは、1Giなどの退避閾値量です。quantityの値はKubernetesで使用される数量表現と一致する必要があります。 リテラル値またはパーセンテージ(%)を使用できます。
例えば、ノードの総メモリが10GiBで、利用可能なメモリが1GiB未満になった場合に退避をトリガーする場合、退避閾値をmemory.available<10%またはmemory.available<1Giのどちらかで定義できます(両方を使用することはできません)。
ソフト退避の閾値
ソフト退避閾値は、退避閾値と必須の管理者指定の猶予期間をペアにします。 kubeletは猶予期間が経過するまでポッドを退避しません。 kubeletは猶予期間を指定しない場合、起動時にエラーを返します。
ソフト退避閾値の猶予期間と、kubeletが退避中に使用する最大許容Pod終了の猶予期間を両方指定できます。 最大許容猶予期間を指定しており、かつソフト退避閾値に達した場合、kubeletは2つの猶予期間のうち短い方を使用します。 最大許容猶予期間を指定していない場合、kubeletはグレースフルな終了ではなくPodを即座に終了します。
ソフト退避閾値を構成するために次のフラグを使用できます:
eviction-soft: 指定された猶予期間を超えた場合にPodの退避をトリガーする、memory.available<1.5Giのような退避閾値のセット。eviction-soft-grace-period: Podと退避をトリガーする前にソフト退避閾値を保持する必要がある時間を定義する、memory.available=1m30sのような退避猶予期間のセット。eviction-max-pod-grace-period: ソフト退避閾値に達した場合、Podを終了する際に使用する最大許容猶予期間(秒)。
ハード退避の閾値
ハード退避閾値には、猶予期間がありません。 ハード退避閾値に達した場合、kubeletはグレースフルな終了ではなく即座にポッドを終了してリソースを回収します。
eviction-hardフラグを使用して、memory.available<1Giのようなハード退避閾値のセットを構成します。
kubeletには、次のデフォルトのハード退避閾値があります:
memory.available<100Mi(Linuxノード)memory.available<500Mi(Windowsノード)nodefs.available<10%imagefs.available<15%nodefs.inodesFree<5%(Linuxノード)imagefs.inodesFree<5%(Linuxノード)
これらのハード退避閾値のデフォルト値は、いずれのパラメーター値も変更されていない場合にのみ設定されます。 いずれかのパラメーター値を変更すると、他のパラメーター値はデフォルト値として継承されず、ゼロに設定されます。 カスタム値を指定するには、すべての閾値を指定する必要があります。
containerfs.availableとcontainerfs.inodesFree(Linuxノード)のデフォルトの退避閾値は次のように設定されます:
-
単一のファイルシステムがすべてに使用されている場合、
containerfsの閾値はnodefsと同じに設定されます。 -
イメージとコンテナの両方に対して分離されたファイルシステムが構成されている場合、
containerfsの閾値はimagefsと同じに設定されます。
現在はcontainerfsに関連する閾値のカスタムオーバーライド設定はサポートされていないため、そのような設定を試みると警告が出ます。指定されたカスタム値はすべて無視されます。
退避の監視間隔
kubeletは、設定されたhousekeeping-intervalに基づいて退避閾値を評価しており、デフォルトでは10sです。
ノードの状態
kubeletは、猶予期間の構成とは関係なく、ハードまたはソフト退避閾値に達したためにノードが圧迫されていることを示すノードのConditionsを報告します。
kubeletは、次のように退避シグナルをノードの状態にマッピングします:
| ノードのCondition | 退避シグナル | 説明 |
|---|---|---|
MemoryPressure |
memory.available |
ノード上の利用可能なメモリが退避閾値に達しています |
DiskPressure |
nodefs.available, nodefs.inodesFree, imagefs.available, imagefs.inodesFree, containerfs.available, or containerfs.inodesFree |
ノードのルートファイルシステム、イメージファイルシステム、またはコンテナファイルシステムのいずれかの利用可能なディスク容量とinodeが退避閾値に達しています |
PIDPressure |
pid.available |
(Linux)ノード上で使用可能なプロセス識別子が退避閾値を下回りました |
コントロールプレーンは、これらのノードの状態をテイントにもマッピングします。
kubeletは、設定された--node-status-update-frequencyに基づいてノードの状態を更新し、デフォルトでは10sです。
ノードの状態の振動
場合によっては、ノードが定義された猶予期間を超えずに、ソフト閾値の上下を振動することがあります。
これにより、報告されるノードの状態がtrueとfalseの間で頻繁に切り替わり、不適切な退避の判断をトリガーする可能性があります。
振動を防ぐために、eviction-pressure-transition-periodフラグを使用できます。
このフラグは、kubeletがノードの状態を別の状態に遷移させるまでの時間を制御します。
デフォルトの遷移期間は5mです。
ノードレベルのリソースの回収
kubeletは、エンドユーザーのPodを退避する前にのノードレベルのリソースを回収しようとします。
ノードのDiscPressure状態が報告されると、kubeletはノード上のファイルシステムに基づいてノードレベルのリソースを回収します。
imagefsまたはcontainerfsがない場合
ノードにnodefsファイルシステムのみがあり、退避閾値に達した場合、kubeletは次の順序でディスク容量を解放します:
- deadなPodとコンテナをガベージコレクションします。
- 未使用のイメージを削除します。
imagefsを使用する場合
ノードにコンテナランタイムが使用するためのimagefsファイルシステムがある場合、kubeletは次のようにノードレベルのリソースを回収します:
-
nodefsファイルシステムが退避閾値に達した場合、kubeletは終了したPodとコンテナをガベージコレクションします。 -
imagefsファイルシステムが退避閾値に場合、kubeletは未使用のイメージをすべて削除します。
imagefsとcontainerfsを使用する場合
ノードにコンテナランタイムが使用するためのcontainerfsとimagefsファイルシステムがある場合、kubeletは次のようにノードレベルのリソースを回収します:
-
containerfsファイルシステムが退避閾値に達した場合、kubeletは終了したPodとコンテナをガベージコレクションします。 -
imagefsファイルシステムが退避閾値に達した場合、kubeletはすべての未使用のイメージを削除します。
kubeletの退避におけるPodの選択
kubeletは、ノードレベルのリソースを回収しても退避シグナルが閾値を下回らない場合、エンドユーザーのPodを退避し始めます。
kubeletは、次のパラメータを使用してPodの退避順序を決定します:
- Podのリソース使用量がリクエストを超えているかどうか
- Podの優先度
- Podのリソース使用量がリクエストを下回っているかどうか
結果として、kubeletは次の順序でPodをランク付けして退避します:
-
リソース使用量がリクエストを超えている
BestEffortまたはBurstablePod。 これらのPodは、その優先度に基づき、リクエストを超える使用量に応じて退避されます。 -
リソース使用量がリクエストを下回っている
GuaranteedとBurstablePodは、その優先度に基づいて最後に退避されます。
備考:
kubeletは、PodのQoSクラスを使用して退避順序を決定しません。 メモリなどのリソースを回収する際に、QoSクラスを使用して最も退避される可能性の高いPodの順序を予測することができます。 QoSの分類はEphemeralStorageのリクエストには適用されないため、例えばノードがDiskPressure状態にある場合、上記のシナリオは当てはまりません。GuaranteedPodは、すべてのコンテナにリクエストとリミットが指定されており、それらが等しい場合にのみ保証されます。
これらのPodは、他のPodのリソース消費によって退避されることはありません。
(kubeletやjournaldのような)システムデーモンが、system-reservedやkube-reservedの割り当てよりも多くのリソースを消費しており、ノードにはリクエストより少ないリソースを使用しているGuaranteedまたはBurstablePodしかない場合、kubeletは他のPodへのリソース枯渇の影響を制限してノードの安定性を保つために、これらのPodのなかから退避するPodを選択する必要があります。
この場合、最も低い優先度のPodを退避するように選択します。
static Podを実行しており、リソース圧迫による退避を回避したい場合は、そのPodに直接priorityフィールドを設定します。
Static PodはpriorityClassNameフィールドをサポートしていません。
kubeletは、inodeまたはプロセスIDの枯渇に応じてPodを退避する場合、inodeとPIDにはリクエストがないため、Podの相対的な優先度を使用して退避順序を決定します。
kubeletは、ノードが専用のimagefsまたはcontainerfsファイルシステムを持っているかどうかに基づいて、異なる方法でPodをソートします:
imagefsまたはcontainerfsがない場合(nodefsとimagefsは同じファイルシステムを使用します)
nodefsが退避をトリガーした場合、kubeletはそれらの合計ディスク使用量(ローカルボリューム + すべてのコンテナのログと書き込み可能レイヤー)に基づいてPodをソートします。
imagefsを使用する場合(nodefsとimagefsファイルシステムが分離されている)
-
nodefsが退避をトリガーした場合、kubeletはnodefs使用量(ローカルボリューム + すべてのコンテナのログ)に基づいてPodをソートします。 -
imagefsが退避をトリガーした場合、kubeletはすべてのコンテナの書き込み可能レイヤーの使用量に基づいてPodをソートします。
imagefsとcontainerfsを使用する場合(imagefsとcontainerfsは分割されています)
-
containerfsが退避をトリガーした場合、kubeletはcontainerfs使用量(ローカルボリューム + すべてのコンテナのログと書き込み可能レイヤー)に基づいてPodをソートします。 -
imagefsが退避をトリガーした場合、kubeletは特定のイメージのディスク使用量を表すイメージのストレージランクに基づいてPodをソートします。
退避による最小の回収
備考:
Kubernetes v1.34以降、containerfs.availableメトリクスのカスタム値を設定することはできません。
この特定のメトリクスの構成は、構成に応じて、nodefsまたはimagefsに設定された値を自動的に反映するように設定されます。場合によっては、Podの退避によって回収されるリソースがごくわずかであることがあります。 このため、kubeletが設定された退避閾値に繰り返し達し、複数の退避をトリガーする可能性があります。
--eviction-minimum-reclaimフラグやkubeletの設定ファイルを使用して、各リソースの最小の回収量を構成できます。
kubeletがリソース不足を検知すると、指定した値に達するまでリソースを回収し続けます。
例えば、次の構成は最小回収量を設定します:
apiVersion: kubelet.config.k8s.io/v1beta1
kind: KubeletConfiguration
evictionHard:
memory.available: "500Mi"
nodefs.available: "1Gi"
imagefs.available: "100Gi"
evictionMinimumReclaim:
memory.available: "0Mi"
nodefs.available: "500Mi"
imagefs.available: "2Gi"
この例では、nodefs.availableシグナルが退避閾値に達した場合、kubeletはシグナルが1GiBに達するまでリソースを回収します。
その後は500MiBの最小量を回収し続け、利用可能なnodefsストレージが1.5GiBに達するまで続行します。
同様に、kubeletはimagefsリソースを回収し、imagefs.availableの値が102Giに達するまでリソースを回収を試みます。
これは、コンテナイメージストレージの102GiBが利用可能であることを示します。
kubeletが回収できるストレージ量が2GiB未満の場合、kubeletは何も回収しません。
eviction-minimum-reclaimのデフォルト値は、すべてのリソースに対して0です。
ノードのメモリ不足の挙動
kubeletがメモリを回収する前にノードで メモリ不足 (OOM)イベントが発生した場合、ノードはoom_killerに依存して対応します。
kubeletは、PodのQoSに基づいて各コンテナのoom_score_adj値を設定します。
| サービスの品質 | oom_score_adj |
|---|---|
Guaranteed |
-997 |
BestEffort |
1000 |
Burstable |
min(max(2, 1000 - (1000 × memoryRequestBytes) / machineMemoryCapacityBytes), 999) |
kubeletがノードでOOMが発生する前にメモリを回収できない場合、oom_killerはそのノード上で使用しているメモリの割合に基づいてoom_scoreを計算し、次にoom_score_adjを加算して各コンテナの有効なoom_scoreを計算します。
その後、oom_killerは最も高いスコアを持つコンテナを終了します。
これは、スケジューリングリクエストに対して多くのメモリを消費する低いQoS Podのコンテナが最初に終了されることを意味します。
Podの退避とは異なり、コンテナがOOMで強制終了された場合、kubeletはrestartPolicyに基づいてコンテナを再起動できます。
グッドプラクティス
退避の構成に関するグッドプラクティスを次のセクションで説明します。
スケジュール可能なリソースと退避ポリシー
退避ポリシーを使用してkubeletを構成する場合、スケジューラーがPodのスケジュール直後にメモリ圧迫をトリガーして退避を引き起こさないようにする必要があります。
次のシナリオを考えてみましょう:
- ノードのメモリキャパシティ: 10GiB
- オペレーターはシステムデーモン(kernel、
kubeletなど)に10%のメモリ容量を予約したい - オペレーターはシステムのOOMの発生を減らすために、メモリ使用率が95%に達したときにPodを退避したい
この場合、kubeletは次のように起動されます:
--eviction-hard=memory.available<500Mi
--system-reserved=memory=1.5Gi
この構成では、--system-reservedフラグによりシステム用に1.5GiBのメモリが予約されます。
これは総メモリの10% + 退避閾値量です。
ノードは、Podがリクエスト以上のメモリを使用している場合や、システムが1GiB以上のメモリを使用している場合に、退避閾値に達する可能性があります。
これにより、memory.availableシグナルが500MiBを下回り、閾値がトリガーされます。
DaemonSetとノードの圧迫による退避
Podの優先度は、退避の決定において重要な要素です。
kubeletは、DaemonSetに属するPodを退避させたくない場合、そのPodのspecに適切なpriorityClassNameを指定して十分な優先度を与えることができます。
より低い、またはデフォルトの優先度を使用して、十分なリソースがある場合にのみDaemonSetのPodを実行できるようにすることも可能です。
既知の問題
リソースの圧迫に関連する既知の問題について次のセクションで説明します。
kubeletが即座にメモリ圧迫を検知しないことがある
デフォルトでは、kubeletはcAdvisorを定期的にポーリングしてメモリ使用量の統計を収集します。
メモリ使用量がその間に急速に増加した場合、kubeletはMemoryPressure状態を十分な早さで検知できない可能性があり、OOMキラーが呼び出される可能性があります。
--kernel-memcg-notificationフラグにより、kubeletのmemcg通知APIを有効にして、閾値を超えたとき即座に通知を受け取ることができます。
極端な使用率を達成しようとするのではなく、合理的なオーバーコミットを目指している場合、この問題に対して実行可能な回避策は--kube-reservedおよび--system-reservedフラグを使用してシステム用のメモリを割り当てることです。
active_fileメモリは使用可能なメモリとして見なされません
Linuxでは、カーネルがアクティブなLRUリスト上のファイルベースのメモリのバイト数をactive_file統計として追跡します。
kubeletは、active_fileメモリの領域を回収不可能として扱います。
一時的なローカルストレージを含むブロックベースのローカルストレージを集中的に使用するワークロードの場合、カーネルレベルのファイルおよびブロックデータのキャッシュにより、多くの直近アクセスされたキャッシュページがactive_fileとしてカウントされる可能性が高いです。
これらのカーネルブロックバッファがアクティブなLRUリストに十分に存在すると、kubeletはこれを高いリソース使用として観測し、ノードにメモリ圧迫が発生しているとしてテイントし、Podの退避をトリガーします。
より詳細については、https://github.com/kubernetes/kubernetes/issues/43916を参照してください。
その動作を回避するためには、集中的なI/Oアクティビティを行う可能性があるコンテナに対してメモリリミットとメモリリクエストを同じ値に設定します。 そのコンテナに対して最適なメモリのリミット値を見積もるか、測定する必要があります。
次の項目
- APIを起点とした退避について学ぶ
- Podの優先度とプリエンプションについて学ぶ
- PodDisruptionBudgetsについて学ぶ
- Quality of Service (QoS)について学ぶ
- Eviction APIについて学ぶ